#060 「抜くしかない」って言われた歯、ほんまに残せへんの?

抜くしかないと言われた歯を本当に残せないのか歯科医師に相談する患者さんの4コマ漫画
抜歯と言われた歯でも根や歯ぐき・骨・歯のヒビの有無を確認して保存可能か診断する歯科医師
抜歯と言われた歯でも再根管治療や歯根端切除で保存できる場合があると説明する歯科医師
大きな歯のヒビや破折、支える骨が少ない場合は抜歯が必要になることもあると説明する歯科医師

【4コマ解説】

目次

「抜くしかない」って言われた歯、ほんまに残せへんの?

歯医者で、

「この歯はもう抜くしかありません」

と言われたら、

「ほんまにもう残せへんの?」
「何かほかに方法ないん?」
「できることなら自分の歯を残したい」

と思う方は多いと思います。

実際、状態によっては再根管治療や歯根端切除術などによって、抜歯せずに歯を残せる可能性がある場合があります。

一方で、歯が大きく割れている場合や、歯を支える骨が大きく失われている場合など、残念ながら抜歯が適切なケースもあります。

大切なのは、

「抜歯と言われたから絶対抜く」
でも、
「何がなんでも残す」
でもありません。

まず、

なぜ抜歯が必要と言われたのか

を正確に診断することが重要です。

「抜歯が必要」と言われる理由は一つではありません

歯を抜く必要があると判断される理由には、さまざまなものがあります。

たとえば、

  • 根管治療をしても根の先の炎症が改善しない
  • 歯の根が大きく割れている
  • 虫歯が歯ぐきのかなり深い部分まで進んでいる
  • 歯を支えている骨が大きく失われている
  • 歯が大きくグラグラしている
  • 残っている歯質が非常に少ない
  • 何度も腫れや感染を繰り返している

などです。

同じ「抜歯」と言われた歯でも、原因によって残せる可能性や治療方法は大きく変わります。

そのため、まずは抜歯と診断された理由を確認することが大切です。

根管治療で治らない歯でも、残せることがあります

根管治療を行っても、

「噛むと痛い」
「歯ぐきが何度も腫れる」
「根の先の炎症が治らない」

という場合があります。

しかし、

根管治療で治らなかった=そのまま抜歯

とは限りません。

原因によっては、もう一度根の中を治療する再根管治療を検討できることがあります。

根管治療をしても治らない原因や、その後の治療方法については、
「#059 根っこの治療しても、治らへんことあるん?」
でも詳しく解説しています。

再根管治療で歯を残せる場合があります

過去に根管治療をした歯でも、

見つけにくい根管が残っていた
複雑な根管の中に細菌が残っていた
被せ物の隙間から再感染した

などが原因の場合には、再根管治療を行うことで改善する可能性があります。

再根管治療では、以前に根の中へ入れた材料を除去し、もう一度根管を確認します。

そして、

根管内を清掃
↓
洗浄・消毒
↓
状態を確認
↓
再び根管充填

という治療を行います。

一度治療した歯が再び悪くなる理由については、
「#057 一回治した根っこ、また悪くなることあるん?」
も参考にしてください。

再根管治療が難しい場合には「歯根端切除術」という方法もあります

歯の上側から根管治療を行っても改善しない場合や、根管の形などによって上からの再治療が難しい場合には、歯根端切除術を検討できることがあります。

歯根端切除術は、歯ぐき側から根の先へ直接アプローチし、

根の先にある炎症や感染した組織
と
歯根の先端部分

を取り除く外科的な治療方法です。

必要に応じて、根の先側から根管を封鎖します。

つまり、

通常の根管治療では届きにくい根の先へ、外側からアプローチして歯を残す方法

です。

すべての歯に行えるわけではありませんが、条件が合えば抜歯の前に検討できる方法の一つです。

「虫歯が深すぎるから抜歯」と言われた歯でも残せる場合があります

抜歯と言われる理由は、根管治療だけではありません。

虫歯が歯ぐきのかなり深い位置まで進んでいる場合、

「被せ物を作るための歯が残っていない」

という理由で抜歯を勧められることがあります。

しかし、歯根の長さや割れ方などの条件が合えば、**エクストルージョン(歯根挺出)**という方法で歯を歯ぐきの上まで少し引き上げ、被せ物を作れる状態にできる場合があります。

当院では実際に、「虫歯が大きすぎて抜歯しかない」と言われた歯にエクストルージョンを行い、自分の歯を残して被せ物まで治療した症例があります。

詳しくは、
「歯を残せるかもしれない『エクストルージョン』という選択肢」
をご覧ください。

ただし、エクストルージョンもすべての歯に適応できるわけではありません。

歯根の長さや破折の位置、周囲の骨などを確認したうえで判断します。

歯のヒビや破折がある場合は、診断がとても重要です

「抜歯しかない」と診断される理由の一つに、歯の破折があります。

特に、歯根が縦方向に大きく割れる「歯根破折」では、その割れ目から細菌が入り込み続けます。

根管治療で根の中をきれいにしても、割れた部分そのものを治すことはできません。

そのため、破折の位置や程度によっては歯を残すことが難しく、抜歯が適切になる場合があります。

ただし、歯のヒビや破折は通常のレントゲンだけでは分かりにくいこともあります。

症状や歯周ポケット、噛んだときの痛みなどを確認し、必要に応じてCTなども用いて総合的に診断します。

歯を支える骨が大きく失われている場合もあります

重度の歯周病によって、歯を支える骨が大きく失われている場合にも、保存が難しくなることがあります。

歯そのものが残っていても、

歯を支える土台となる骨がほとんどない

状態では、歯を安定して残すことが難しい場合があります。

そのため、

「歯がまだ口の中に残っているから、治療すれば必ず残せる」

というわけではありません。

歯だけでなく、歯ぐきや周囲の骨まで含めて判断する必要があります。

「残せる」と「残した方がいい」は同じではありません

これは非常に大切なポイントです。

高度な治療を行えば、

物理的には残せる可能性がある歯

もあります。

しかし、

何度も感染を繰り返す可能性が高い
強い痛みが続いている
歯を支える骨がほとんどない
治療しても長期的な安定が期待しにくい

といった場合には、無理に歯を残すことが患者さんにとって一番良いとは限りません。

大切なのは、

「とにかく抜かないこと」ではなく、その歯を治療して長期的に使える可能性があるか

という視点です。

CTを撮ることで分かることもあります

通常の歯科用レントゲンは二次元の画像です。

根管の形や根の先の炎症、歯根破折などについて、通常のレントゲンだけでは判断が難しい場合があります。

そのようなケースでは、必要に応じて歯科用CTを使用し、歯や顎の骨を立体的に確認することがあります。

特に、

以前に根管治療した歯が治らない
原因がはっきりしない
再根管治療や外科的治療を検討する

といった場合には、CTから得られる情報が治療方針の判断に役立つことがあります。

「抜歯と言われたけど残したい」と相談してもいい?

もちろんです。

抜歯すると、自分の歯を元に戻すことはできません。

そのため、

「本当に抜歯しかないのか確認したい」
「残せる治療方法があるなら知りたい」

と思うことは自然なことです。

歯の状態によっては、再根管治療や歯根端切除術、エクストルージョンなど、別の治療方法を検討できることがあります。

一方で、診査・診断を行った結果、

やはり抜歯が適切

という結論になることもあります。

その場合も、

なぜ残すことが難しいのか

を理解したうえで治療を選択することが大切です。

セカンドオピニオンを受けるという方法もあります

「抜歯と言われたけれど、本当にこれしか方法がないのか確認したい」

という場合には、別の歯科医師に意見を聞くセカンドオピニオンという方法もあります。

特に、

自分の歯をできるだけ残したい
他の治療方法がないか確認したい
抜歯する前に納得して決めたい

という場合には、選択肢の一つになります。

ただし、セカンドオピニオンを受ければ必ず歯を残せるという意味ではありません。

改めて診査・診断した結果、最初の歯科医院と同じく抜歯が適切と判断されることもあります。

抜歯が必要になった場合にも、その後の治療方法があります

残念ながら歯を残すことが難しく、抜歯が必要になる場合もあります。

その場合には、歯を失った部分について、

入れ歯
ブリッジ
インプラント

などで噛む機能を回復する方法を検討します。

大切なのは、

「抜歯になった=治療終了」

ではなく、その後のお口全体の噛み合わせまで考えることです。

残っている歯や骨の状態、患者さんの希望、費用などを確認しながら治療方法を選択します。

「抜くしかない」と言われても、まず理由を確認しましょう

歯医者で、

「この歯は抜くしかありません」

と言われると、とてもショックだと思います。

しかし、まず確認してほしいのは、

「なぜ抜く必要があるのか」

です。

原因が根管内の感染であれば、再根管治療を検討できる場合があります。

根の先の病変であれば、歯根端切除術を検討できる場合があります。

虫歯が深いことが原因であれば、条件によってはエクストルージョンなどを検討できる場合もあります。

一方で、歯根が大きく割れていたり、歯を支える骨が大きく失われていたりすると、抜歯が適切な場合もあります。

つまり、

「抜歯と言われた歯を全部残せる」わけでも、
「抜歯と言われたら絶対に残せない」わけでもありません。

まず現在の歯の状態を正確に診断し、

残せる可能性があるのか
どのような治療が必要なのか
残した場合の予後はどうなのか

を確認したうえで治療方法を選ぶことが大切です。

「できることなら自分の歯を残したい」

という方は、抜歯する前に一度ご相談ください。

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