親知らずが半分だけ出ているのは大丈夫?歯ぐきに埋まった親知らずを抜歯した症例

「親知らずが少しだけ出てきたけど、このまま放っておいて大丈夫?」

「痛くはないけど、半分だけ歯ぐきから出ている親知らずが気になる……」

このようなご相談は、歯科医院では珍しくありません。

親知らずは、まっすぐきれいに生えてくるとは限りません。

一部分だけが歯ぐきから顔を出し、残りが歯ぐきや骨の中に埋まったままになっていることもあります。

実はこの**「親知らずが半分だけ出ている状態」**は、歯ブラシが届きにくく、親知らずの周囲に汚れがたまりやすい状態です。

その結果、親知らずの周囲の歯ぐきに炎症を起こす「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」につながることがあります。

今回は、半分だけ頭を出していた左下の親知らずを抜歯した症例をご紹介します。

目次

今回の症例|「親知らずが少し出てきたので抜いてほしい」

今回の患者さんは、

「親知らずが少し出てきたので抜いてほしい」

ということで来院されました。

診察すると、左下の親知らずが完全には生えておらず、歯の一部分だけが歯ぐきから出ている状態でした。

症例概要

  • 主訴:親知らずが少し出てきたので抜いてほしい
  • 診断:智歯周囲炎
  • 部位:左下の親知らず(左下8番)
  • 処置:親知らずの抜歯
  • 処置時間:約20分

※治療時間や治療方法は、親知らずの位置・形態・周囲の骨の状態・開口量などによって異なります。

親知らずが半分だけ出ていると、なぜ問題になるのでしょうか?

親知らずが半分だけ出ていると、歯と歯ぐきの境目に汚れが入り込みやすくなります。

ところが、一番奥にある親知らずは歯ブラシが非常に届きにくい場所です。

特に歯の一部が歯ぐきに覆われていると、その隙間に食べかすやプラーク(歯垢)が入り込み、きれいに取り除くことが難しくなります。

その結果、

  • 親知らずの周囲の歯ぐきが腫れる
  • 歯ぐきから出血する
  • 奥歯の周辺が痛くなる
  • 口を開けにくくなる
  • 噛むと痛む
  • 親知らずや手前の歯がむし歯になる

などのトラブルにつながることがあります。

このような親知らずの周囲に起こる炎症を**「智歯周囲炎」**といいます。

レントゲンで確認すると、親知らずの後方部分が骨の中にありました

【ここにレントゲン写真】

今回のレントゲン写真を確認すると、左下の親知らずは完全に萌出しておらず、歯の後方部分が骨の中に残っている状態でした。

つまり、口の中から見えている部分だけを見ると「少し親知らずが出ているだけ」に見えますが、実際には歯の一部が骨に覆われています。

このような場合、通常の抜歯のように器具をかけて、そのまま歯を抜けるとは限りません。

今回の症例では、親知らずを安全に取り出すために歯ぐきを切開し、必要な部分の骨を削って抜歯することにしました。

今回の抜歯が難しかった理由

今回の症例には、もう一つ難しいポイントがありました。

それが**「お口の開く量が非常に小さかったこと」**です。

下の親知らずは、ただでさえお口の一番奥にあります。

開口量が小さいと、親知らずが見えていても、抜歯に必要な器具を適切な角度で入れるためのスペースが十分に確保できないことがあります。

今回も器具がようやく入る程度のスペースしかなく、通常よりも器具操作が難しい状態でした。

さらに、親知らずとその手前の第2大臼歯が非常に近接していたため、手前の大切な歯を傷つけないよう注意しながら処置を進める必要がありました。

そこで、必要な部分だけ骨を削り、器具を入れるスペースを確保したうえで、親知らずを少しずつ動かしながら抜歯しました。

約20分で親知らずを抜歯しました

さまざまな制約がある症例でしたが、親知らずを無事に抜歯することができました。

処置に要した時間は約20分でした。

抜歯後は抜歯した部分を確認し、必要な処置を行ったうえで縫合しました。

「自分の親知らずも20分で抜けるの?」

と思われるかもしれませんが、親知らずの抜歯時間は症例によって大きく異なります。

親知らずの向き、埋まっている深さ、歯根の形、周囲の骨の状態、手前の歯との位置関係、開口量などによって、抜歯方法や必要な時間は変わります。

半分だけ出ている親知らずは、必ず抜いた方がいい?

ここは非常に重要なところです。

「半分だけ出ている親知らず=必ず抜歯」ではありません。

親知らずがあっても、正常に生えていて清掃ができており、むし歯や歯周病がなく、手前の歯などにも悪影響を与えていなければ、経過観察できる場合があります。

一方で、

  • 親知らずの周囲で炎症を繰り返している
  • 歯ブラシが届かず清掃が難しい
  • 親知らずがむし歯になっている
  • 手前の第2大臼歯に悪影響を与えている
  • 将来的にトラブルを起こす可能性が高い

と判断される場合には、抜歯を検討します。

大切なのは、「痛いか、痛くないか」だけで判断しないことです。

痛くない親知らずでも、一度確認しておきましょう

親知らずは「痛くなったら歯医者に行けばいい」と考えている方も多いと思います。

しかし、親知らずはお口の一番奥にあるため、ご自身では状態を確認することが難しい歯です。

特に今回のように半分だけ歯ぐきから出ている親知らずでは、見えない部分に汚れがたまり、知らない間に炎症やむし歯が進行していることがあります。

また、親知らずそのものだけではなく、手前にある大切な第2大臼歯に悪影響を及ぼしていないかも確認する必要があります。

「親知らずが少しだけ出ている」

「昔、親知らずを抜いた方がいいと言われた」

「痛くないからそのままにしている」

という方は、一度歯科医院で状態を確認しておくことをおすすめします。


必要に応じてCTで親知らずの位置を詳しく確認します

下の親知らずを抜歯するときには、親知らずの位置だけでなく、歯根の形や周囲の組織との位置関係を確認することが重要です。

特に下顎には「下歯槽神経」と呼ばれる神経が通っているため、レントゲン写真などを確認し、必要に応じてCT撮影を行います。

CTでは三次元的に確認できるため、通常のレントゲン写真だけでは判断しにくい親知らずと周囲組織との位置関係を、より詳しく把握することができます。

当院では、親知らずの状態を診査したうえで、それぞれの患者さんに適した治療方針を検討します。

親知らずの抜歯が怖い方へ

「抜いた方がいいのは分かっているけど、親知らずの抜歯が怖い」

という方も少なくありません。

特に、

「痛いのが怖い」

「治療中の音が苦手」

「昔の歯科治療で怖い経験をした」

「緊張が強くて治療を受けられない」

という理由から、親知らずを何年もそのままにしている方もいらっしゃいます。

びわ湖大津デンタルクリニックでは、抜歯に対する恐怖心が強い患者さんについて、全身状態や治療内容などを確認したうえで、静脈内鎮静法を併用した治療を検討できる場合があります。

静脈内鎮静法は、点滴から鎮静薬を投与し、緊張や不安を和らげた状態で歯科治療を受けていただく方法です。

抜歯そのものの痛みには局所麻酔を使用します。

「怖いから」という理由だけで親知らずを長期間放置している方も、まずは一度ご相談ください。

まとめ|「少し出ているだけ」と放置しないことが大切です

今回ご紹介したのは、左下の親知らずが半分だけ歯ぐきから出ており、智歯周囲炎を起こしていた症例でした。

一見すると「少し親知らずが出ているだけ」に見えても、その周囲には歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすい環境ができていることがあります。

親知らずを抜く必要があるかどうかは、生え方や周囲の歯への影響などによって異なります。

そのため、

「痛くないから大丈夫」
「少ししか出ていないから大丈夫」

と自己判断するのではなく、現在どのような状態なのかを一度確認することが大切です。

親知らずそのものを治療するだけでなく、その手前にある大切な永久歯を守ることも、親知らずを診査する重要な目的の一つです。

親知らずが半分だけ出ている、歯ぐきが時々腫れる、抜いた方がいいと言われたことがあるなど、親知らずについて気になることがありましたらご相談ください。

※親知らずの抜歯方法・処置時間・術後の経過には個人差があります。抜歯後には疼痛、腫脹、出血、感染、開口障害、知覚異常などが生じる可能性があります。診察および必要な検査を行ったうえで、個々の状態に応じて治療方針を判断します。

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