奥歯で頬の内側を何度も噛むのは親知らずが原因?上の親知らずを抜歯した症例

食事をしているときに、
「ガリッ!」
と頬の内側を噛んでしまった経験はありませんか?
一度くらいなら誰にでも起こることですが、
「最近、いつも同じところを噛む」
「傷が治りかけたと思ったら、また噛んでしまう」
「奥歯のあたりの頬がいつも痛い」
という場合には、単なる偶然ではなく、歯の位置や噛み合わせに原因が隠れていることがあります。
そして、その原因のひとつが親知らずです。
今回は、上の親知らずによって頬の内側を繰り返し噛んでしまっていた患者さんの症例をご紹介します。
この患者さんの親知らずは、横向きに埋まっていたわけではありません。
実は、きちんと歯ぐきから出ている親知らずでした。
それでも抜歯を検討した理由とは何だったのでしょうか?
「親知らずで頬の内側を噛んでしまう」というご相談
今回の患者さんのお悩みは、
「親知らずのところで頬の内側を噛んでしまう」
というものでした。
診察すると、左上の親知らず(左上8番)は歯ぐきの中に埋まっているわけではなく、口腔内に完全に萌出している状態でした。
しかし、問題となっていたのが、親知らずと頬粘膜との位置関係です。
噛んだときに頬の内側の粘膜を巻き込んでしまい、繰り返し傷を作る状態になっていました。
今回の症例

- 部位:左上の親知らず(左上8番)
- 状態:完全萌出
- 症状:親知らず付近で頬粘膜を繰り返し噛んでしまう
- 診断:親知らずによる頬粘膜の咬傷
- 処置:左上親知らずの抜歯
- 抜歯に要した時間:約1〜2分
※抜歯時間や治療方法、術後の症状などには個人差があります。
なぜ親知らずがあると頬を噛むことがあるの?
親知らずは、正式には**第三大臼歯(智歯)**と呼ばれ、歯列の一番奥に位置する歯です。
お口の中では、奥に行くほど歯と頬粘膜との距離が近くなります。そのため、一番奥に位置する親知らずの生える位置や方向によっては、頬粘膜と接触しやすくなることがあります。
特に頬側へ傾いて生えている場合などには、咀嚼するときに頬の内側を巻き込んでしまうことがあります。
そして、一度頬を強く噛んでしまうと、その部分が腫れて厚みが出ることがあります。
すると、
頬を噛む
↓
傷ができて腫れる
↓
腫れた部分が歯に近づく
↓
また同じ場所を噛んでしまう
という状態になることもあります。
「なぜかいつも同じ場所を噛む」という方は、一度歯との位置関係を確認した方がよいでしょう。
まっすぐ生えている親知らずなら抜かなくてもいい?

ここが今回の症例で、ぜひ知っていただきたいポイントです。
親知らずというと、
「横向きに生えている」
「斜めに生えている」
「歯ぐきの中に埋まっている」
といった状態をイメージされる方が多いと思います。
確かに、このような親知らずはトラブルを起こすことがあります。
しかし、
「まっすぐ生えている=必ず残しておいて大丈夫」
というわけでもありません。
親知らずを残せるかどうかを考えるときには、生えている方向だけではなく、
きちんと清掃できるか、むし歯や歯周病がないか、手前の歯に悪影響を与えていないか、噛み合わせに問題がないか、頬などの周囲組織を傷つけていないか
などを総合的に確認します。
今回の親知らずは完全に萌出していましたが、頬粘膜を繰り返し噛んでしまう原因になっていたことが問題でした。
「頬を噛むくらいなら、そのままでもいいのでは?」
頬の内側を一度噛んだだけで、すぐに親知らずを抜く必要があるわけではありません。
頬を噛んでしまう原因は親知らずだけではなく、歯並びや噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、詰め物や被せ物など、さまざまな要因が考えられます。
大切なのは、なぜ頬を噛んでいるのかを確認することです。
今回の患者さんの場合は診察した結果、親知らずと頬粘膜との位置関係が問題となっており、繰り返し咬傷を起こしていました。
そこで患者さんと相談し、原因となっている左上の親知らずを抜歯することにしました。
「親知らずの抜歯って、ものすごく大変なんですよね?」

親知らずの抜歯と聞くと、
「ものすごく痛そう……」
「歯ぐきを切って、骨を削って……」
「1時間くらいかかるのでは?」
と心配される患者さんも少なくありません。
でも実際には、親知らずの抜歯難易度は症例によって大きく違います。
横向きに深く埋まっている下顎の親知らずと、今回のように完全に萌出している上顎の親知らずでは、必要となる処置がまったく異なる場合があります。
今回の左上の親知らずについては、診察・画像診断などから状態を確認したうえで抜歯を行いました。
抜歯にかかった時間は、わずか1〜2分でした

局所麻酔を行い、十分に麻酔が効いていることを確認してから抜歯を開始しました。
今回の親知らずは完全に萌出しており、抜歯に適した状態であったため、処置は非常にスムーズに進みました。

そして、親知らずを抜歯。
抜歯そのものに要した時間は、約1〜2分でした。
「抜けましたよ」→「えっ!?」

抜歯が終わったので、
私:「抜けましたよ」
とお伝えすると、
患者さん:「えっ!?」
と、とても驚かれていました。
どうやら患者さんとしては、
「親知らずの抜歯=もっと時間がかかる大変な治療」
というイメージを持たれていたようです。
実は今回の患者さんは、当院ホームページに掲載している親知らずの症例記事をご覧になり、それをきっかけに勇気を出して受診してくださいました。
親知らずの抜歯が怖くてなかなか踏み切れなかった患者さんが、実際に治療を受け、
「思っていたよりずっと早く終わった」
と感じていただけたことは、私たちにとってもうれしい出来事でした。
ただし「上の親知らずなら1〜2分で抜ける」という意味ではありません
ここは非常に大切なので補足しておきます。
今回の症例では約1〜2分で抜歯できましたが、すべての上顎の親知らずを短時間で抜歯できるわけではありません。
親知らずの抜歯難易度は、
- 歯の生えている方向
- 萌出している程度
- 歯根の本数や形態
- 歯根の湾曲
- 周囲の骨との関係
- 上顎洞との位置関係
- 開口量
- 周囲の歯の状態
などによって異なります。
今回の「1〜2分」という時間は、あくまでもこの患者さん、この親知らずの場合です。
診察やレントゲン検査などによって状態を確認してから、適切な抜歯方法を判断することが重要です。
頬を何度も噛むなら、一度お口の中を確認してみましょう
食事中にたまたま頬を噛むことは、誰にでもあります。
しかし、
「いつも同じ場所を噛む」
「奥歯の横にいつも傷ができている」
「治ったと思ったら、また同じところを噛む」
「親知らずが生えてから頬を噛むようになった」
という場合には、一度歯科医院で原因を確認することをおすすめします。
親知らずが原因とは限りません。
歯並びや噛み合わせ、歯ぎしり・食いしばり、詰め物・被せ物などが関係している場合もあります。
原因をきちんと確認したうえで、それぞれの状態に適した対応を考えることが大切です。
親知らずは「埋まっているから抜く」だけではありません
親知らずの診察で重要なのは、
「生えているか、埋まっているか」だけを見ることではありません。
今回の症例のように、きれいに萌出しているように見える親知らずでも、頬粘膜を繰り返し傷つけていることがあります。
反対に、親知らずがあるからといって、すべて抜歯しなければならないわけでもありません。
びわ湖大津デンタルクリニックでは、親知らずそのものだけではなく、手前の歯・歯ぐき・噛み合わせ・周囲の粘膜などへの影響も含めて確認し、抜歯が必要かどうかを判断します。
「奥歯で頬を何度も噛んでしまう」
「親知らずが原因なのか知りたい」
「親知らずを抜きたいけれど怖い」
という方は、一度ご相談ください。
親知らずの抜歯で大切なのは、「とにかく抜くこと」ではなく、その親知らずを残すメリットと、残すことで起こるデメリットをきちんと見極めることです。
※親知らずの抜歯方法、処置時間、術後経過には個人差があります。抜歯後には疼痛、腫脹、出血、感染などが生じる可能性があります。診察および必要な画像検査を行ったうえで、患者さんごとに治療方針を判断します。
親知らず抜歯の症例
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