#072 歯が抜けたら、絶対入れ歯せなあかんの?

歯が抜けたら絶対に入れ歯にしなければならないのか歯科医師に質問する患者さんの4コマ漫画
歯を失った場合は入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの治療法があり放置は勧められないと説明する歯科医師
歯を失ったまま放置すると隣の歯が傾く・噛み合わせが崩れる・噛み合う歯が伸びることがあると説明する歯科医師
失った歯の治療は入れ歯・ブリッジ・インプラントから状態や希望に合った方法を選ぶと説明する歯科医師

【4コマ解説】

目次

歯が抜けたら、絶対入れ歯せなあかんの?

「歯が抜けたら、もう入れ歯しかないん?」
「まだ若いのに入れ歯はちょっと抵抗ある……」
「1本くらいやったら、そのままでもええんちゃう?」

歯を失ったとき、

「次は入れ歯ですね」

と思われる方は多いかもしれません。

しかし、結論からいうと、

歯を失ったからといって、必ず入れ歯にしなければならないわけではありません。

失った歯を補う代表的な方法には、

入れ歯
ブリッジ
インプラント

があります。

それぞれ治療方法や特徴が違うため、

失った歯の本数や場所
残っている歯の状態
顎の骨の状態
噛み合わせ
患者さんの希望
費用

などを確認しながら治療方法を選びます。

そもそも、歯が抜けたところは絶対に治療せなあかんの?

歯を失った場合でも、すべてのケースでまったく同じ治療が必要になるわけではありません。

たとえば、

どの歯を失ったのか
何本失ったのか
反対側ではしっかり噛めているか
隣の歯が動いていないか
噛み合う歯が移動していないか

などによって状況は異なります。

最後方の奥歯1本だけを失ったケースなどでは、状態によって経過を確認する場合もあります。

一方で、奥歯を何本も失っていて噛む場所が大きく減っている場合には、残っている歯への負担も考えて、欠損を補う治療を検討する意味が大きくなります。

つまり、

「歯が1本なくなったら必ずすぐ治療」
でも、
「痛くないなら全部放置でOK」
でもありません。

お口全体を確認して判断することが大切です。

奥歯がなくても前歯があれば大丈夫?

前歯が残っていると、

「普通に食事できてるから大丈夫」

と感じることがあります。

しかし、前歯と奥歯では役割が違います。

奥歯は食べ物を細かくすりつぶし、強い噛む力を受け止める重要な場所です。

複数の奥歯を失った場合には、残っている歯だけで噛むことになり、負担のバランスが変わることがあります。

この点については、
「#071 奥歯ないけど、前歯あるし放っといてええの?」
で詳しく解説しています。

歯がないところを放置すると、隣の歯が動くことがあります

歯を失った部分にはスペースができます。

長期間そのままにしていると、そのスペースへ向かって隣の歯が傾いたり移動したりすることがあります。

すると、

歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなる
歯磨きがしにくくなる
噛み合わせが変わる

といった問題につながることがあります。

変化の程度には個人差がありますが、

「歯がない部分だけの問題」ではなくなる可能性がある

ということは知っておきましょう。

噛み合う相手の歯が伸びてくることもあります

歯を失うと、その歯と噛み合っていた反対側の歯には相手がいなくなります。

その状態が続くと、噛み合う相手を失った歯が移動することがあります。

位置が大きく変わると、将来的に歯を補おうとしたときに、

入れ歯や被せ物を入れるスペースが少ない
噛み合わせの調整が必要になる

など、治療が複雑になることがあります。

そのため、

「今は痛くないから何年か放っておこう」

ではなく、少なくとも一度は状態を確認しておくことをおすすめします。

歯を失ったときの治療① 部分入れ歯

一部の歯を失った場合に使うのが、部分入れ歯です。

取り外し式の装置で、失った部分に人工の歯を並べ、残っている歯などを利用して入れ歯を安定させます。

部分入れ歯の特徴としては、

複数の歯をまとめて補いやすい
取り外して清掃できる
条件によって保険診療で作ることができる
後方に自分の歯が残っていないケースにも対応しやすい

などがあります。

特に、左右の奥歯を複数失っている場合には、部分入れ歯が治療方法の一つになります。

入れ歯治療について詳しく知りたい方は、

「入れ歯(部分入れ歯・総入れ歯)について詳しくはこちら」

をご覧ください。

入れ歯のデメリットもあります

もちろん、入れ歯にも注意点があります。

取り外し式なので、

最初は異物感がある
慣れるまで噛みにくいことがある
食後などに清掃が必要
バネが見える場合がある
歯ぐきに当たって痛むことがある

などがあります。

また、入れ歯は作って一度入れれば終わりではありません。

実際に使用しながら、

痛いところ
噛みにくいところ
外れやすいところ

などを確認して調整していくことがあります。

「入れ歯って、ちゃんと噛めるん?」

ここは、入れ歯を考えている患者さんが特に気になるところだと思います。

入れ歯を入れたからといって、天然歯とまったく同じ感覚になるわけではありません。

しかし、歯がない状態と比較すると、失った部分に人工歯を入れることで、噛む機能を回復できる場合があります。

特に、

「前歯はあるけれど奥歯がなくて噛みにくい」

という方では、奥歯を部分入れ歯で補うことで、左右で噛める状態を目指します。

入れ歯でどの程度噛めるのかについては、次の
「#073 入れ歯って、ちゃんと噛めるん?」
で詳しく解説しています。

実際に保険の部分入れ歯で奥歯を補った症例があります

当院には、

前歯は残っているものの、左右の奥歯を複数失っていて噛みにくい

という患者さんに、保険診療の部分入れ歯を製作した症例があります。

正面から見ると前歯が残っているため、

「そんなに歯がないようには見えない」

状態でした。

しかし、奥歯を見ると噛むための歯が不足していました。

そこで残っている歯の状態を確認し、部分入れ歯で左右の奥歯を補いました。

治療前後の写真については、

「奥歯がないけど前歯はある…そのままで大丈夫?保険の部分入れ歯で噛めるようにした症例」

をご覧ください。

歯を失ったときの治療② ブリッジ

もう一つの方法がブリッジです。

ブリッジは、失った歯の両側などにある歯を支えとして、複数の人工歯をつなげて固定する治療です。

入れ歯と違って、

自分で取り外す必要がない

という特徴があります。

一方で、支えにする歯を削る必要がある場合があります。

また、

後ろ側に支えになる歯がない
欠損している範囲が大きい

などの場合には、一般的なブリッジでは対応できないことがあります。

そのため、欠損の場所や残っている歯の状態を確認して適応を判断します。

健康な歯を削ることが気になる場合もあります

ブリッジでは、欠損部の周囲の歯を支えとして利用します。

そのため、

隣の歯がほとんど治療されていない健康な歯

の場合、

「この歯を削ってまでブリッジにするのか?」

という点も治療方法を選ぶときの重要な要素になります。

逆に、隣の歯がすでに大きな被せ物になっている場合などでは、状況が変わることもあります。

治療方法は、単純に欠損部分だけで選ぶのではなく、支えになる歯の状態まで含めて考えることが大切です。

歯を失ったときの治療③ インプラント

インプラントは、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根を埋入し、その上に人工の歯を作る方法です。

大きな特徴は、

周囲の歯を支えとして使わず、失った部分に独立した歯を作れること

です。

また、固定式なので自分で取り外す必要はありません。

一方で、

外科手術が必要
基本的に自由診療
治療期間が必要
顎の骨や全身状態などによって適応を判断する必要がある

といった特徴があります。

インプラントについて詳しく知りたい方は、

「インプラント治療について詳しくはこちら」

をご覧ください。

入れ歯・ブリッジ・インプラント、結局どれが一番ええの?

これは患者さんからよく聞かれる質問ですが、

すべての人にとって一つの方法が一番良い、というわけではありません。

たとえば、

部分入れ歯

複数の歯を補いやすく、条件によって保険診療にも対応できます。

一方で、取り外しが必要で、慣れるまで異物感が出ることがあります。

ブリッジ

固定式なので取り外しの必要はありません。

一方で、支えにする歯を削る必要があるケースがあります。

インプラント

周囲の歯を支えにせず、固定式の歯を作れることが特徴です。

一方で、外科手術が必要で、基本的には自由診療です。

それぞれメリットと注意点があります。

費用だけで決めてもいい?

費用は治療方法を選ぶうえで非常に重要な要素です。

特に複数の歯を失っている場合には、治療方法によって費用が大きく変わることがあります。

しかし、

費用だけ
あるいは
見た目だけ

で決めるのではなく、

残っている歯をどう守るか
どのくらい噛めるようにしたいか
取り外し式でも問題ないか
外科手術を希望するか
今後のメンテナンスができるか

なども含めて考えることが大切です。

入れ歯が嫌だから、そのまま放置するのはどう?

「入れ歯は絶対イヤやから何もしない」

という方もいます。

もちろん、患者さんの希望は治療方法を決めるうえで重要です。

しかし、

入れ歯をしない=そのまま放置するしかない

というわけではありません。

ブリッジやインプラントが可能なケースもあります。

反対に、欠損範囲や残っている歯の状態によっては、部分入れ歯が現実的な選択肢になる場合もあります。

まず選択肢を確認してから判断しましょう。

入れ歯にしたら、もうずっと同じ入れ歯を使える?

入れ歯も永久に同じ状態で使えるわけではありません。

時間がたつと、

歯ぐきや顎の骨の状態が変化する
入れ歯がすり減る
残っている歯の状態が変わる
噛み合わせが変化する

ことがあります。

そのため、使用中の入れ歯についても定期的なチェックや調整が必要です。

また、残っている自分の歯を虫歯や歯周病から守ることも非常に重要です。

歯を失った原因も一緒に考えましょう

失った部分を補うだけでなく、

なぜその歯を失ったのか

も確認しましょう。

原因が、

虫歯
歯周病
歯の破折
強い噛み合わせ

などであれば、残っている歯にも同じリスクがあるかもしれません。

入れ歯やブリッジ、インプラントで歯を作っても、ほかの歯を次々に失ってしまえば、お口全体の状態は悪くなってしまいます。

欠損治療と同時に、

今残っている歯を守ること

が大切です。

「絶対入れ歯」ではなく、自分に合った方法を選びましょう

歯を失った場合の代表的な選択肢には、

入れ歯
ブリッジ
インプラント

があります。

そして状態によっては、すぐに補わず経過を確認するケースもあります。

大切なのは、

「歯が抜けたら入れ歯」
と最初から決めつけることでも、

「困ってないから放っとこう」

と自己判断することでもありません。

まず、

どの歯を失ったのか
何本失っているのか
残っている歯は健康か
顎の骨の状態はどうか
噛み合わせはどうなっているか

を確認します。

そのうえで、それぞれの治療方法のメリット・注意点を理解し、患者さん自身の希望も含めて治療方法を選ぶことが大切です。

「歯が抜けたけど、入れ歯しかないんかな?」

と心配されている方も、まずは一度ご相談ください。

現在のお口の状態を確認したうえで、どのような選択肢があるのか一緒に考えていきましょう。

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