口腔ケア時の姿勢
高齢のご家族などの介護や介助は、実はなかなかの肉体労働です。正しい方法で行わなくては介護・介助される側のデメリットだけでなく、お世話する側にも大きな負担がかかってしまいます。「介護で腰を痛めてしまった」などというお話を聞くこともあります。
口腔ケアも例外ではありません。正しい方法で口腔ケアを行うのはもちろん、ケアをするときの介助者の姿勢も重要です。
今回は口腔ケアをするときの姿勢について説明しましょう。
ケア時の姿勢、正解は1つではない
口腔ケア介助時の姿勢については絶対的な正解があるというわけではありません。あえて1つの正解を挙げるとすれば「介助される方に合わせた姿勢をとる」ということになるでしょうか。
ケア時の姿勢は介助される方の状態に合わせて正解は変わっていきます。では、どのような状態を見てケア時の姿勢を決めるのでしょうか。それは「イスに座ったときの状態」です。
・イスに座っても上体が前傾してしまう
・イスに座っても上体が後傾してしまう
・頭がグラグラして安定しない
これらのうち、1つでも当てはまるものがある方に対しては、背後からの口腔ケアを行います。
背後からの口腔ケアでは、介助される方の斜め後方に立ち、歯ブラシを持っていない側の手と腕で介助される方の頭部全体を支えます。頭部の角度は上顎が上を向いてしまわないように、しっかりとホールドします。上顎が上に向いてしまうとケア中に誤嚥してしまう危険があるからです。
なお、前歯や下の歯を磨くときは介助される方の真後ろに立って、自分のお腹あたりで頭部全体を支えながらブラッシングするとスムーズにみがけます。
介助される方の負担にならないように、ケア中も介助する側がこまかく姿勢や立つ位置を調整することが大切です。
イスに安定して座っていられる場合
イスに安定して座っていられる方の場合は、正面から口腔ケアを行いましょう。介助される側も相手の顔が見えるため、安心してケアを受けられる姿勢です。
お世話する側もイスに座って相手と目線を合わせましょう。立ったり中腰になったりして行うと介助される側も上を見上げるようになってしまい、上顎が上を向いてしまいます。これでは誤嚥のリスクが高くなってしまいますね。
また、中腰などの無理な姿勢で介助をしていると、お世話する側の腰も悲鳴を上げてしまいかねません。
でも真正面から目線を合わせる形では磨きにくい場所があることも確かです。歯の裏側などは見えませんよね。そんなときは相手の顔の角度を変えるのではなく(誤嚥の危険があります!)、自分が軽く立ち上がったり、しゃがみこんだりして見やすい角度に姿勢を調整しましょう。