知っていますか?国民皆歯科健診
「国民皆歯科健診」っていう言葉、最近よく目にするという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは2022年の6月7日に閣議決定した経済財政運営の指針である「骨太の方針」に盛り込まれた項目です。国民皆歯科健診とは、簡単に言うとすべての国民が歯科健診を受けることという意味なのですが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか?
歯科健診の義務対象は?
現在のところ、歯科健診はすべての国民に義務づけられてはいません。義務とされているのは1歳半と3歳、そして高校までの学校に通う学生に対してだけです。歯科医院の外来診療では3カ月に1回の歯科健診を患者さんに提案しておりますが、これは義務ではありません。
厚生労働省のデータによると1年以内に歯科健診を受けた人は2人に1人、さらに歯周病健診になると、20人に1人しか受診したことがないと言います。
このように歯科健診を受診している人は、とても少ないのですが、なぜ国民皆歯科健診が検討されるようになったのでしょうか?
歯周病予防が全身疾患の予防につながる
日本では40歳以上の約8割が歯周病であると言われます。歯周病は放置しておくと最終的には歯を失ってしまうことのある疾患ですが、歯周病の怖さはこれだけではありません。
歯周病組織で作られるサイトカイン(炎症を引き起こす物質)などが血管を通して全身に運ばれることで、さまざまな全身疾患を引き起こす危険があるのです。
例えば、ガンのリスクは1.24倍に、脳梗塞のリスクは1.63倍に、狭心症・心筋梗塞のリスクは2.11倍に、糖尿病のリスクは2倍になるとされています。ほかにもアルツハイマー型認知症の誘発と症状の悪化に関係するという研究結果も存在します。また、歯周病予防の口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の発症リスクを従来の60%以下に減少させるというデータもあります。
そこで、国民の健康寿命を伸ばし、さらに高騰する医療費を削減するために定期的な歯科健診を実現しようというのが骨太の方針の国民皆歯科健診というわけです。
国民皆歯科健診が実現するとどうなる?
ただし、国民皆歯科健診は検討に入ったという段階で、詳細はまだ決定していません。本当に国民全員が歯科健診を受けるのか?という部分から議論が始まっていくところです。
実際に全員に歯科健診を行うとして、実施の主体がどこになるのか?という問題もあります。何より歯科医師、歯科衛生士の人手不足も深刻です。受診費用の負担についても議論されていくでしょう。
健診方法としては、健康診断などのときに唾液を採取してまずは歯周病の簡易検査を行い、その後必要な人に歯科健診を受けてもらうというアイディアもあります。
こういったさまざまな点について議論を進めて、3~5年後の実施を目指すということのようです。
全世代での歯科健診を実施することで歯科疾患の早期発見・早期治療を実現できます。口腔内の健康が増進することで全身の健康も増進し、その結果健康寿命が伸びます。健康寿命が伸びることが医療費の削減につながり、国民皆保険制度の維持につながるという考え方が「国民皆歯科健診」の狙いなのです。
制度化はこれからですが、歯科健診は当院でいつでも受けられます。もちろん訪問先(ご自宅・介護施設など)でもできますので、いつでもご依頼ください!