口腔ケアはじめの一歩
4月は新たなスタートの月です。今回はあらためてはじめて口腔ケアに携わる人向けに、口腔ケアってどんなこと?何をすればいいの?と思われている方に、はじめの一歩としてここだけは押さえてほしいポイントを説明します。
口腔ケアってなに?
口腔ケアとは口腔内の清潔と潤いを保ち誤嚥性肺炎などの感染症予防や、口腔リハビリテーションにより機能の維持・改善を図り、食生活のQOLを向上することを目的としています。
何をすればいいの?
●まずお口の中を観察しましょう。
お口の中のチェックポイントとして次のことをチェックしましょう。
- 入れ歯は入っていますか?
どんな入れ歯が入っていて、どの歯にバネがかかっているか観察していると、入れ歯の不具合に気が付けるかもしれません。
□ グラグラしている歯はありませんか?
歯を少し触ってみたとき、左右にグラグラ動いていませんか?
歯周病で歯が動いているのかもしれません。歯周病は痛みを伴わないので本人さんも気が付いていないことがあります。
- 食べかすが残っていませんか?
入れ歯や口の中のどこかに食べかすが残っていませんか?
入れ歯と粘膜の間に隙間ができて入れ歯が合わなくなってきているのかもしれません。また、口腔機能の低下で、口の中の奥のほうに食べ物が残っていたりすることもあります。
- むし歯がそのまま放置されていませんか?
高齢者のむし歯は痛みを伴わないこともあり、放置されていることもしばしばあります。
- 舌や粘膜をみて赤くなったり白くなったり傷ついていませんか?
入れ歯が合わなくなってきて、粘膜に強く当たっているのかもしれません。
口腔乾燥があっても、赤くなったりします。
まずは、お口の中を知ることから始めましょう。
●基本的には歯磨き
うがいをするだけでは、歯垢(プラーク=細菌の塊)は除去することはできません。歯垢は食べ物の食べカスではありません。歯垢1mgに約300種類1億個以上の細菌が存在していて、歯の表面に強く付着しています。この歯垢ですが、白いあるいは少し黄色かかった色で、歯と同じ白っぽい色なのでわかりにくいのです。また、歯と歯茎の境目には隙間があり、歯周病になるとその溝は深くなっていきます。その隙間にも歯垢は付着するので除去する必要があります。
歯垢を除去するには、歯ブラシ等で機械的にかき落とし、うがいで洗い流すしかありません。
基本的な歯の磨き方は、歯ブラシに小豆粒くらいの歯磨剤をつけ1本1本磨いていきます。歯ブラシを歯に強く押し付けると毛先がねてしまい、細かいところに磨き残しがでてしまいます。歯に軽く当て歯ブラシの毛先が動いていることを確認しながら磨いていきます。
歯はとても複雑な形をしています。歯の形や並びは人それぞれで磨き方のポイントも変わってきます。
利用者さんに合った道具や方法をその時の状況に合わせて選んでいくことが大事です。
歯磨きの介助は自立の方から寝たきりの方まで様々ですので、対話をしながら焦らずできることからはじめていきましょう。
歯ブラシだけでは、なかなかきれいにすることが難しいときは、補助的な口腔ケアグッズを活用しましょう。
・歯間ブラシ(歯と歯の間を清掃するもの)
・スポンジブラシ(粘膜を清掃するもの)
・ワンタフトブラシ(歯と歯茎の境目や細かいところ等を清掃するもの)
・デンタルフロス(糸状のもので歯と歯の隙間が狭いところを清掃するもの)
・デンタルリンス(歯磨き前に使用すると、歯垢を分解し除去効果を高めてくれます)
・口腔用ウエットシート(口腔粘膜を清拭するもの)
・舌ブラシ (舌を清掃するもの)
口腔湿潤剤(口腔乾燥を呈する人に口腔粘膜を湿潤させるスプレーやジェル)
●お口を動かす(口腔機能の維持と向上)
口腔機能が低下してしまう原因は加齢や疾患により様々です。口腔機能が低下してしまった症状としては下記のような例があげられます。
□ 食事に時間がかかるようになった
□ ご飯を食べるときにむせるようになった
□ 食べたものが口のどこかに残っている
□ 食事の時に飲み物が必要になった
□ 食べたものが口からこぼれる
食事をしているときに観察すると気づけるかもしれません。
口腔機能の維持、向上として普段出来ることとしてお口を動かすことです。おしゃべりしてもらったり、お口の体操を取り入れたりしながら、楽しく続けていけることがポイントです。
お口の体操のコツは、お口をしっかりおおげさなくらい大きく動かすことと、声を出すことです。コロナ禍で食事の前に声をだすことは難しいので、起床時やひとりの時に声を出すようにしましょう。
・唾液腺マッサージ
大きな唾液腺3つを頬の上から手のひらでマッサージし、唾液腺を刺激し一時的に唾液を出す方法があります。
耳下腺・・・耳たぶの下あたりにある大きな唾液腺。指全体でゆっくり押す
顎下腺・・・下あごのやわらかい部分を親指でゆっくり押す
舌下腺・・・下顎先のやわらかい部分を両手の親指で真上にゆっくり押す
食前、就寝時に行うと効果的です。
・おしゃべり
人と話をすることで口を動かしたり、声を発声したり、コミュニケーションをとることで脳が活性化されます。
いかがでしたか?口腔ケアを始める前にこの3つのポイントを押さえて、少しずつ幅を広げていきましょう。